【報ステ】「M7あり得る」なぜ珠洲市で地震続発?“流体地震”の研究者が解説(2023年5月5日)

5日午後2時42分ごろ、石川県能登地方を震源とする地震がありました。地震の規模はマグニチュード6.5。震源の深さは12キロと浅く、震源に近い珠洲市では、震度6強を観測しました。

◆能登半島の地殻変動の分析を続けている京都大学・西村卓也教授に聞きます。

(Q.気象庁の会見で、「今回の地震には“流体の移動”が関与している可能性がある」としましたが、“流体”とは具体的には何を指すのでしょうか」
“流体”とは、高温・高圧の地下の水のこと。地下の深い場所から上昇してきた水と考えています。地下10数キロ程度の深さから流体が上がってきていて、この水が周囲に拡散していく過程で、断層に刺激を与え、地震を発生させていると考えています。

石川県で、震度6強の揺れを観測したのは、2007年3月25日の「能登半島地震」以来となります。輪島市などで3万棟近くの住宅が被害を受けました。1人が亡くなっています。石川県で震度6強の揺れを観測したのは16年ぶりのこと。ただ、この間、大きな地震がなかったわけではありません。2021年は、震度5弱の地震。そして、去年6月には、震度6弱と5強の地震が、立て続けに起きました。

能登地方の地震活動は、ここ数年で活発化。それも、珠洲市に集中しています。大きな地震の震源の深さは、いずれも12~14キロの範囲でした。

今回の地震は、ここ数年に起きたものと、エネルギーそのものが違います。
気象庁:「今回、マグニチュードが1.1大きい。40~50倍の大きさ。単純にエネルギーで比べた場合、40~50倍」

政府の地震調査委員会は、先月、こう評価していたそうです。
気象庁:「一連の地震活動は、当分続くと考えられる。今回の活動には“流体の移動”が関与している可能性」

(Q.なぜ能登で地震活動は活発化しているのでしょうか)
能登地方には活断層が多数あって、そもそも地震が起こりやすい場所です。2年半程前から地下に流体が上がってきました。なぜわかったというと、国土地理院が全国に1300カ所、独自でも4カ所、GPSを珠洲市に設置しています。このデータを見ますと、地面が7センチ隆起していたことがわかりました。それは、そこに流体が入って膨らんできて、隆起しているということがわかってきました。

日本列島は、4つのプレートの上に乗っています。太平洋プレートは日本海側に向かって沈み込んでいます。
海側のプレートは、陸地に向かって沈み込むように動いています。この海側のプレートとともに大量の“流体“が地下深部へ移動。“流体”は岩石より軽いため、浮力で地下十数キロまで上昇し、地面の隆起はこの段階で起きます。上昇した先にあるのは「岩盤」。ここには小さな亀裂がたくさんあり、“流体”が亀裂に流れ込むことで、岩盤に圧力が加わります。もともと岩盤にあった亀裂がずれて地震が発生します。もしくは断層面に“流体”が入り込み、潤滑油のような役割を果たし、ずれて地震が起きます。

(Q今回はマグニチュードが6.5と大きく、福井・新潟まで震度4を観測しました。流体地震でもこんなに地震の規模が大きくなるのでしょうか)
流体だけで地震を起こしているわけではありません。このあたりには活断層が、複数がありまして、内陸型直下型地震のきっかけの一つとして、この流体が関与しているのではないかということです。例えば、阪神・淡路大震災、熊本地震と同じようなタイプですので、マグニチュード7に近い規模の地震は起こり得るということです。

(Q.他の場所でも流体地震は起こる可能性はありますか)
流体がどこにあるのかは詳しくはわかっていませんが、日本列島の地下には、水を含んだ太平洋プレートがあるので、そこから能登半島に向かって水が上がってきているように見えますが、日本列島のあちこちに水が上がっていることがわかってきました。一部が温泉になっていたりします。流体が関与する地震は他の場所でも起きる可能性があります。

(Q.今後も能登地方で地震が発生する可能性はありますか)
能登半島の地下には流体が残っていると考えられます。2年半以上、地震活動が続いていて、急にはおさまらないと思いますので、5日と同じような規模、もしくはさらに大きいのが発生するかもしれませんので、数日から1週間の間十分注意していただきたいです。

(Q.能登地方の人達はどんな心構えが必要ですか)
私は何度も研究のため、珠洲市を訪問しています。地震が続いたので、地震に慣れてしまった部分もあると思いますので、今後も、5日のような大きな地震が起こり得るので、意識して、家具の固定や危ないところに寝ないなど、備えをしていただきたいと思います。
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