【報ステ解説】「米議会襲撃が影響か」先進国でなぜ?独“国家転覆”計画 元貴族逮捕(2022年12月8日)

ドイツでクーデターを企てたとして、極右勢力のメンバーらが逮捕されました。

ドイツ中部にある静かな町、バート・ローベンシュタインには7日、武装した警官たちが集結していました。

目的地は中世のお城のようなハンティングハウスです。

近隣住民:隣人が極右の過激派で、反乱を計画したことはショックです。ファシストと結託していたのです。

このお城の主というのが、逮捕されたハインリヒ13世容疑者(71)。ローマ帝国の城代を先祖に持つ貴族の末裔で、極右主義者であり、今回の事件の首謀者です。

フランク検事総長:この団体の目的は、暴力と軍事的手段を使い、ドイツの国家秩序・自由民主主義の基本を排除することだ。

ハインリヒ13世容疑者たちが逮捕されたのは、国会議事堂を襲撃し、国家転覆を企てたという、クーデター未遂の容疑です。

ドイツ当局は、捜査員3000人以上を投入し、関係先130カ所以上を強制捜査。メンバーら22人と、ロシア人1人を含む支援者3人を逮捕しました。

逮捕されたなかには、特殊部隊の軍人や現役の裁判官といった職業の人も含まれていました。

フェーザー内相:ライヒスビュルガーは、政府転覆の妄想と、陰謀論を背景につくられました。好戦的なライヒスビュルガーは、民主主義・国家・共同体を守る人々に憎しみを抱いている。

ライヒスビュルガーは、戦後ドイツを否定し、1871年から第一次世界大戦で負けるまで存在した、ドイツ帝国の継続を信じるといった極右思想の運動です。

様々な個人や組織があり、独自のパスポートを発行している人たちもいます。

元々ドイツには、ネオナチをはじめ、移民排斥に特化するなど、様々な極右思想を標榜する団体があります。

新型コロナの感染拡大をきっかけに、政府のロックダウンやワクチン接種に反対する人を取り込み、その信奉者は現在、2万人ほどいるとされています。

警官を銃殺するといった凶悪犯罪も起こしていて、その存在が問題視されていました。

近年、ドイツでは、至る所に浸透する極右思想や陰謀論と、その武装化が深刻な状態になっています。

2020年には、ドイツ陸軍のエリート特殊部隊『KSK』の隊員が極右思想に染まっていることが発覚し、武器や弾薬も流出したことから、部隊の一部が解体されました。

フェーザー内相:公職に就くライヒスビュルガーの対処を目標にしていました。つまり、ライヒスビュルガーを公務から早く排除するため、数日中に法改正案を提出します。

近隣住民:理解できません。よその国の出来事ならともかく、何かよからぬ計画が家のすぐ前で起きていたなんて。政府が常に正しいとは限らないが、あの連中よりはましでしょう。

元貴族のロイス家。一族からこのような事件で逮捕者を出したことについて、このようにコメントしています。

ロイス家のコメント:30年前、彼はモダンでハツラツとした実業家だった。それが事業に失敗して、過激化してしまった。事態はどんどん悪くなっている。一族にとっては壊滅的な話です。

***

摘発されたテロ組織は「ドイツ政府が“ディープステート=闇の政府”に支配されているという陰謀論を信じクーデターを計画したとみられています。

◆ドイツなどヨーロッパ政治が専門の同志社大学・吉田徹教授に聞きました。

(Q.異なった職種・社会的地位のメンバーが逮捕されましたが、なぜ、このような人たちが結託したのでしょうか)

吉田徹教授:政治的に安定しているドイツで起きたことが正直、驚いた。2021年1月、陰謀論を信じた人たちがアメリカの連邦議会を襲撃した事件が影響を与えた可能性もある。

また、事件の背景には、今の政権に対する「2つの不満要因」が主にあると分析しています。

【社会的地位の高い層の不満】軍人・旧貴族などは、戦後のドイツ社会で地位が低下。

【連続する危機が生んだ不満】難民移民の流入、コロナ禍の行動制限など、現政権への反発。

こうした不満要素が、陰謀論・クーデター計画につながったのではないかと、吉田教授はみています。

(Q.イタリアやフランスでは極右政党が躍進しました。政治側と連動している可能性は考えられますか)

吉田徹教授:今回のクーデター計画は『極右政党』など、政治的な動きとは関係ないとみている。同様の事件が他国でも起こるとは考えにくいが、アメリカの連邦議会襲撃事件が、ドイツに影響を与えたとしたら、他国でも起こる可能性はある。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp