「新型コロナの第9波は“最大”の可能性も…すでに始まっている」5類移行で今後気を付けたいこと ワクチンは打つべき?後遺症は?【解説全文】名古屋大学病院 山本尚範医師

「このあと第9波は来るのか?」、「ワクチンは打つべき?」、「治療薬は?」、「後遺症は?」…新型コロナ“5類移行”で、名古屋大学医学部附属病院 山本尚範医師に聞きました。徹底解説です。
Q.まず一つ目です。5月8日から新型コロナが5類へと移行しました。山本医師はどのように見ていますか?(名古屋大学医学部附属病院 山本尚範医師)
「はい。一つの区切りだとは思うんですね。だからいずれは、こういう正常化に向けて動き出さなければいけないので、『そういうときが来たんだな』という感じです」Q.このゴールデンウィークは、割と開放的に過ごした人が多かったと思うんです。医療の現場にいる医師から見て、違和感はなかったですか?
(名古屋大学医学部附属病院 山本尚範医師)
「皆さん3年半我慢してきたので、ようやく子供たちも含めて笑顔が見られるという意味では、個人としては違和感はないんですが、ただ、ここからちょっと心配ではあるなと思っています」(夏目みな美キャスター)
「その5類移行に伴いまして、新規感染者の全数把握が5月7日まで、5月8日以降は週に1回の発表となります。5月7日までの愛知県の感染状況を見てみましょう」

「新型コロナの第9波はすでに始まっている」

4月16日からのカレンダーです。赤い矢印は、前の週の同じ曜日よりも人数が増えてる場合に付けられています。

4月後半、赤い矢印が続いています。

連休に入って検査数が少なくなった日もあり、青い矢印ありましたが、最新、5月7日が863人で、8日も432人という数字が出ています。Q.第9波は、もう始まってるんでしょうか?(名古屋大学医学部附属病院 山本尚範医師)
「(第9波は)始まっていると思います。この山はおそらく今までで一番大きくなる可能性を含んでいるというふうに思います。というのは、日本はやっぱりまだ感染した人が人口の4割弱なんですね。欧米は8割方感染して“ハイブリッド免疫”を持ってますから、そういう意味では、日本はまだ感染の余地が残っているということになります」(大石邦彦アンカーマン)
「今、“ハイブリッド免疫”という話がありましたけども、いわゆるワクチン接種した人と感染した人、二つの免疫を持っているということですけども、日本はそれがないから、まだ感染する余地があるということになるんですか?」(名古屋大学医学部附属病院 山本尚範医師)
「そうですね。やはり欧米を見ても、人口の8割ぐらいの人が感染して、ワクチンを何回か打った状態になると、だんだん減ってくるという傾向がありますので、まだ日本は少し増える可能性がある」Q.医療が、またちょっと危ない状況になるということもありますか?(名古屋大学医学部附属病院 山本尚範医師)
ありうると思います。コロナ以外の病気も増えてくると思うんですね、経済が活発化してくると。なのでそういう意味では医療体制のことは、まだ目が離せない」

今後ワクチン接種はするべきか?

(夏目みな美キャスター)
そして三つ目の疑問なんですがワクチン接種についてです。今後打つべきかどうか、大石さん、決めかねている人も多いかなと思うんですが。(大石邦彦アンカーマン)
そうですね。ハイブリッド免疫という話もありましたけども、実は5月8日から、新型コロナワクチンの春開始接種が始まります。対象は、高齢者の方、基礎疾患のある方などになってくるんですけども、もう「接種券」が届いてる方もいらっしゃるかもしれません。その判断材料にしていただければと思います。

まずはメリットから見ていきます。感染予防効果なんですが、山本さん、これはどう見ればよろしいですか。(名古屋大学医学部附属病院 山本尚範医師)
「はい。今オミクロンは、かなり免疫を逃れる力が強いですので、感染を予防する効果はあるんですけれども、2か月~3か月ぐらいは少なくともあるだろうと。ただ、打っていても感染することはあるということですね」(大石邦彦アンカーマン)
「ということは、2~3か月経過したら、感染する可能性は十分考えられるということですか?」(名古屋大学医学部附属病院 山本尚範医師)
「そうですね。やはりすり抜けてしまう可能性はあると」(大石邦彦アンカーマン)
「重症化予防効果なんですが、これはワクチンにはまだあるんでしょうか」(名古屋大学医学部附属病院 山本尚範医師)
「はい。(重症化予防効果は)非常に多くありまして、全くワクチンを打っていない人は日本ではほとんどいませんが、全く打っていない人と、ワクチンを、いわゆるブースターというか、追加接種まで4回5回打った人を比べると、10倍から20倍ぐらい、亡くなる確率を減らせるというデータがあります。半年ぐらいは少なくとも効果が続くであろうと」(大石邦彦アンカーマン)
「一方で、ワクチン接種のデメリットは、例えば接種後の副反応疑いが、2万7000件近くあります。そして、ワクチン接種後の死亡疑いは、2000件近くあるということなんです。

一方で、新型コロナで感染して亡くなった方というのは、7万4654人となっておりますが、第6波以降はですね、肺にダメージを受けて亡くなるような人は、少なくなってきている。

重症化予防効果は、少なくとも半年あるということだったんですが、そもそも重症化するのかということなんですけれども、こちら新型コロナとインフルエンザで比較します。重症化率でいうと60から70代で、インフルエンザよりも低い。そして80歳以上も、インフルエンザよりもコロナの方が重症化率が低くなっています。致死率を見ていきます。新型コロナとインフルエンザで、インフルエンザよりも、60から70代は少し低い。80歳以上も、少し低くなっています。

これ、そもそも重症化しにくいのであれば、わざわざデメリットもあるのに、ワクチンを打った方がいいのか、打たない方がいいのか、打たない方がいいんじゃないかという考え方もあると思いますけども、その辺についてはいかがですか?」

ハイリスクの人は、1年に1回ぐらい追加接種を

(名古屋大学医学部附属病院 山本尚範医師)
「はい。これはですね、やはり日本の、特に高齢者の方はワクチンの接種回数が非常に多いんですね。世界で見ても、今突出して多い数になっていますので、その効果もあって、この致死率の低さっていうのは実現しているというふうに思います。それとまた、コロナはインフルエンザよりも感染力が極めて強いので、今後また人口の4割ぐらいの方が感染をしてくる可能性があるんですよね。そうすると第8波が、いちばん死者数が多かったのと同じで、第9波はもっと死者数が増えてしまうリスクはある。

その意味では、ハイリスクの方ですね、高齢者の方、持病があるような方は、1年に1回ぐらいは、追加接種をする方が安全かなという気はしています」(大石邦彦アンカーマン)
「デメリットも見つつ、個人の体の状況を考えて、接種するかどうか判断すべきだということですね」

新型コロナ“治療薬”の現状は

(柳沢彩美キャスター)
「新型コロナを克服するには、ワクチンと治療薬が必要だと言われてきました。新型コロナの飲み薬は現在3種類。「ラゲブリオ」、「パキロビッド」、「ゾコーバ」というものがあります。山本先生、これで飲み薬は十分ということなんでしょうか?」(名古屋大学医学部附属病院 山本尚範医師)
「実はこのパキロビッドという薬は、インフルエンザのタミフルという、皆さんご存じだと思いますが、あれよりもずっと成績はいいんです。特効薬と申し上げていいと思います。ただ日本では、200万個ぐらい政府が買い取ったんですけれども、今使われているのは10万個ぐらいで、薬の飲み合わせがですね複雑だということで、忌避(きひ)されているんですけれども、やっぱり海外を見ると、もっと使ってますので、医師も知識をアップデートしていただいて、パキロミッド、ぜひ積極的に使うことを考えてほしいと。ラゲブリオも成績が良いですので、この二つは、命を救う効果が十分あるというふうに考えています」

後遺症のひとつに「慢性疲労症候群」

(柳沢彩美キャスター)
そして新型コロナにかかった場合、心配されているもの、“後遺症”がありますね。主な後遺症は、咳、倦怠感、抜け毛、味覚障害…こういったもので悩んでいる方がいらっしゃいます。(夏目みな美キャスター)
後遺症については、まだまだこれから研究されていく段階にもあると思うんですが。現段階でどこまでわかっているんでしょうか?(名古屋大学医学部附属病院 山本尚範医師)
実は結構なことがわかってきていまして、新型コロナウイルスのインフルエンザとの最大の違いは、ほぼ全ての内臓、臓器ですね。それに侵入することがわかっています。特に脳神経系ですね。「慢性疲労症候群」という病気があるんですが、一見無気力に見えてしまうんですが、本当に動けないという方がいる。4分の1ぐらいの方は寝たきりになってしまう。75%の人はフルタイムで働けない。これが、いちばんコロナの後遺症として、実は多いということがわかってきていまして、特に若い方、36歳から50歳ぐらいの方に多く出るといわれています。これはもう、一生なかなか、すごく良くはならない方が多いので、ここは気をつけていただく必要があるかなと思います。(夏目みな美キャスター)
「5類移行になり、改めて私達はこれから新型コロナとどう付き合っていったらいいんでしょうか」(名古屋大学医学部附属病院 山本尚範医師)
社会経済を回しながらということになると、やはり大事なのは、特に高齢者の方、それから持病を持っていらっしゃる方、特に医療機関とか高齢者施設ですね。こういうところの治療や検査が、有効なことがわかってきていますので、政府はきちっとそこを援助していただいて、流行期は特にハイリスクの方にうつさないように、皆さん、引き続き注意を流行期はしていただくということになると思います」

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https://newsdig.tbs.co.jp/articles/cbc/474527