角谷浩一×宮台真司×神保哲生:安倍元首相銃撃事件を乗り越えて来るべき選挙と向き合う【ダイジェスト】

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マル激トーク・オン・ディマンド 第1109回(2022年7月9日)
ゲスト:角谷浩一氏(政治ジャーナリスト)
司会:神保哲生 宮台真司

 参議院議員選挙の投票日を2日後に控えた7月8日、安倍晋三元首相が候補者の応援で訪れていた奈良県内で演説中に銃撃され、死亡した。現職、もしくは元首相の暗殺という意味では、現職の犬養毅首相が殺害された1932年の5・15事件と、高橋是清元首相(暗殺時は蔵相)が暗殺された1936年の2・26事件以来のこととなり、戦後としては初のことだった。まさか今の日本でこのような暗殺事件が起きるとは、誰が想像しただろう。

 安倍元首相は現在も与党自民党内の最大派閥を率いる日本政界の最高実力者であり、国際社会では最も著名な日本人政治家でもある。その安倍氏が選挙演説中に銃撃されるなどということは絶対にあってはならない、民主主義の根幹を揺るがす蛮行だ。同時に、そのような最高レベルのVIPが白昼、群衆の眼前で至近距離から撃たれていいはずがない。犯人の動機や背景、警備の問題点などを徹底的に洗い出し、このような悲劇が繰り返されないための万全な対応が取られることを期待したい。

 いずれにしても2012年に自民党が政権を奪還して以来、歴代最長の在任期間を誇る安倍氏が凶弾に倒れるというニュースには、多くの国民が大変な衝撃を受けているに違いない。まだ、安倍氏が亡くなったという現実を受け止められない人も少なからずいるだろう。しかし、泣いても笑っても7月10日に選挙がある。安倍氏の死に哀悼の意を表し、その功績に最大限の敬意を払いつつも、われわれはこの悲劇を乗り越えて、選挙で問われている諸問題と向き合わなければならない。

 ビデオニュース・ドットコムでは、この選挙で問われるべき争点として、(1)防衛費2%と敵基地攻撃能力の是非、(2)問題だらけだったコロナ対策の検証と家庭医制度の導入、(3)輸入資源に依存した現行のエネルギー政策の検証と再生可能エネルギーの推進、(4)空前の円安・物価高を許しているアベノミクスに代わる経済政策、(5)労働者全体の利益を代表せず与党に擦り寄る労働組合のあり方、(6)低い食料自給率、の6項目を挙げ、直近の番組内で具体的な議論を進めてきた。

 この選挙が終われば、日本は向こう3年間は国政選挙がない、永田町で言うところの「黄金の3年間」を迎える。しかし、黄金といっても、それはあくまでその間選挙を気にせずにやりたいことができるという意味で、政治家にとっての黄金期間に過ぎない。裏を返せばわれわれはこの選挙の勝者に、事実上向こう3年の白紙委任状を手渡すことになるということだ。その時になって泣き言を言わないためにも、それぞれの有権者が粛々と自分にとっての選挙の争点をよくよく見極め、投票行動に反映させなければならない。

 安倍氏の事件を選挙に影響させてしまうことこそが、日本の市民社会が凶弾に屈することを意味するのではないか。

 参院選直前の収録となった今週のマル激では、長年にわたり日本の政治を取材してきたジャーナリストの角谷浩一氏をゲストに迎え、ここまで明らかになっている情報を元に、衝撃的な安倍氏の銃撃事件をわれわれはどう受け止めるべきかを考えると同時に、こうした状況下で行われる参院選が何をわれわれに問うているのかなどについて、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

【プロフィール】
角谷 浩一 (かくたに こういち)
政治ジャーナリスト
1961年神奈川県生まれ。85年日本大学法学部新聞学科卒業。東京タイムズ記者、「週刊ポスト」、「SAPIO」編集部、テレビ朝日報道局などを経て1995年より現職。

宮台 真司 (みやだい しんじ)
東京都立大学教授/社会学者
1959年仙台生まれ。東京大学大学院博士課程修了。社会学博士。東京都立大学助教授、首都大学東京准教授を経て現職。専門は社会システム論。(博士論文は『権力の予期理論』。)著書に『日本の難点』、『14歳からの社会学』、『正義から享楽へ-映画は近代の幻を暴く-』、『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』、共著に『民主主義が一度もなかった国・日本』など。

神保 哲生 (じんぼう てつお)
ジャーナリスト/ビデオニュース・ドットコム代表 ・編集主幹
1961年東京生まれ。87年コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。クリスチャン・サイエンス・モニター、AP通信など米国報道機関の記者を経て99年ニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を開局し代表に就任。著書に『地雷リポート』、『ツバル 地球温暖化に沈む国』、『PC遠隔操作事件』、訳書に『食の終焉』、『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』など。

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(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)

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